家畜診療所情報
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乳房炎を減らそう(第1回)

乳牛の多発疾病のひとつは乳房炎です。正しい搾乳手順を守ることによって、管内の農家から乳房炎の牛が1頭でも少なくなり、 バルク中の体細胞数や細菌数が少しでも低くなればと願っています。(診療所情報の「乳房炎について」も併せてご覧下さい。)

【1】前搾りをする目的は・・・
1.射乳刺激を与えるため
乳頭を刺激することにより、オキシトシンが分泌されます。子牛が親牛の乳に吸い付くと、乳が下りてくるのと同じ刺激です。
2.乳房炎の早期発見のため
3.乳頭にたまった細菌の多い生乳を破棄するため
前搾りの乳の中には、細菌だけでなく体細胞も多いので、前搾りを行っただけでも、体細胞数は減少します。
【2】前搾りのやり方

前搾り手順 注意点など
1.乳頭がひどく汚れていたら荒拭きをする。  
2.手指を消毒する。 手指の指紋や爪、傷などに細菌が多く付着していますので、 乳頭を触る前にはよく消毒薬で洗っておきましょう。手荒れ防止や消毒効果を上げるために、ゴム手袋の着用をおすすめします。
3.乳頭の付け根をしっかり握り、乳の乳房内への逆流を防ぐ。  
4.勢いよく乳汁を搾りきる。 オキシトシンの分泌をよくするために、各乳頭3〜5回ずつ搾りきります。
5.前搾りの乳をストリップカップに受け、乳汁の異常を確認。 ストリップカップは製品になっているものでなくても、代用品でも十分です。 例えば手に収まりの良いプラスチック容器に、ストッキングを輪ゴムで止めたような簡単なものでも十分効果はあります。 伝染性の細菌の含まれた乳を牛床に搾り捨てるのは止めましょう。
6.異常乳を見つけたら、PLテスターで検査する。  
7.手指をよく消毒してから乳頭清拭をする。  

乳頭を清拭してから前搾りをするのは間違いです。前搾りの乳はたいへん汚れていますので、
まず、前搾り、そして乳頭清拭です。
この順番を忘れないでください。乳頭の汚れがひどい時は、先に乳頭の荒拭きをしてください。

今、乳房炎が少なく、搾乳作業等の見直しの必要はないと思われている方もおられると思います。実際、今問題がなければ今のままの搾乳で良いと思います。 でもこれから発症するかもしれない乳房炎を少しでも早く見つけるために、前搾りをすることはとても大切だと思います。今までに前搾りの経験のない牛も、 2〜3週間くらいでなれてきます。今まで前搾りをしていない酪農家の方も、この機会に始めてみませんか。