家畜診療所情報
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家畜診療所だより
★ 子牛を下痢から守ろう ★
下痢を予防するために
- 1.初乳を十分飲ませましょう
- 初乳とは・・・?
初乳は生まれたばかりの子牛に必要なタンパク質やビタミンなどの栄養素だけでなく、免疫グロブリンを豊富に含んでいます。免疫グロブリンは、 動物の体内で病原体を識別して破壊するタンパク質です。子牛が生まれたら、ただちに初乳を与えてください。初乳を早く給与することは、 子牛が病気になったり死んでしまうことを最小限にし、健やかな子牛を作るために必要です。
【初乳の給与方法】
1日の給与回数 | 早朝の出生 (前夜就眠後〜午前5時) |
昼間の出生 (午前5時〜午後5時) |
夜間の出生 (午後5時〜就眠) |
---|---|---|---|
第1回目 | 分娩後3時間以内に1リットル以内を給与 | ||
第2回目 | 昼間の給餌時に 1リットル給与 |
夜の給餌時又は就眠前に 1リットル給与 |
翌朝の搾乳時に 1リットル給与 |
第3回目 | 夜の搾乳時又は就眠前に 1.5〜2.5リットル給与 |
翌朝の搾乳時に 1.5〜2.5リットル給与 |
昼の給餌時に 1.5〜2.5リットル給与 |
合 計 | 3.5〜4.5リットル |
- 2.病原微生物の感染を予防しよう
- 牛・人・物などによる持込を防ごう ⇒ 消毒・清掃
密飼による伝染を防ごう ⇒ 個別飼育
敷料を清潔にしよう
- 3.ストレスから守ろう
- 気象条件の変化に気をつけよう(寒冷・暑熱ストレス対策)
密飼によるストレスから守ろう(個別飼育)
長距離輸送によるストレスから守ろう(輸送後の経口補液剤・ビタミン剤の給与)
- 4.給与飼料をチェックしよう
- 飼料の変質・変敗に注意しよう(カビなど)
乳房炎乳及び異常乳の給与をしない
- 5.生菌剤・ビタミン剤の応用
- 生菌剤を離乳時まで添加する
ビタミン剤・経口補液剤による体力保持
- 6.こまめに便を観察しよう
- 下痢の早期発見・早期対応
予防プログラム
母 牛 |
・分娩6週間前と3週間前の2回 ・分娩1ヶ月前 |
・大腸菌性下痢予防、ワクチン接種 ・寄生虫(線虫)の駆虫 |
---|---|---|
分 娩 | ||
子 牛 |
・生後3時間以内 | ・初乳の哺乳確認又は強制投与 |
・生後10〜14日以内 | ・サルファ剤の投与 3日間(コクシジウムの予防) | |
・生後1ヶ月 | ・イベルメクチン製剤の投与(線虫の駆虫) サルファ剤の投与 3日間 |
|
・生後2ヶ月 | ・サルファ剤の投与 3日間 |
下痢の種類
子牛の下痢は、病原性の特に強い細菌・ウィルスによる腸管の感染性下痢だけではなく、消化不良性下痢などの非感染性下痢も発生します。 子牛の下痢の主な症状は便に現れます。便の状態を観察しましょう。
【1】感染性下痢
病名 | ロタ | コロナ | アデノ | 大腸菌症 | コクシジウム | サルモネラ | エンテロ トキセミア |
---|---|---|---|---|---|---|---|
便の形 | 水様 | 水様 | 水様 | 泥状 | 水様 | 水様 | 血様 |
便の色 | 無色 | 乳黄色 | 灰白色 | 黄白色 | 茶褐色 | 黄灰白色 | 暗赤色 |
血液 | × | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
臭い | 無 | 無 | 悪 | 悪 | 生臭い | 悪 | 悪 |
呼吸器症状 | あり | あり | あり | ||||
発熱 | 低 | 低 | 高 | 低 | 微 | 高 | 高 |
特異症状 | 脱水 | 脱水 | 虚弱症候群 | 混合感染 | 集団発生 | 悪性頑固 | 突然死 |
月例 | 新生子 | 新生子 | 新生子 | 新生子 | 哺乳中 | 哺乳中 | 離乳前後 |
季節 | 冬季 | 冬季 | 冬季 | 夏季 | 春季 | 季節性なし | 夏季 |
【2】非感染性下痢
分類 | 原因 | |
---|---|---|
消 化 不 良 性 下 痢 症 |
食餌性(不消化便) | 不規則給餌・給水による腸の蠕動異常。 |
脂肪性(白色泥状便) | 脂肪消化酵素、胆汁分泌不足、細菌(特に大腸菌)の異常増殖。 | |
腐敗性(腐敗臭・暗色泥状便) | 過剰あるいは不消化蛋白質の摂取、消化酵素の分泌障害。 | |
発酵性(酸臭・淡褐色便泡沫を含む) | 過剰あるいは不消化炭水化物の摂取、消化酵素分泌障害消化不良のため、生じた発酵産物の刺激による腸蠕動亢進と浸透圧上昇が、呼吸不全を引き起こす。 | |
胃(潰瘍)性下痢症(不消化便) | 第一胃〜四胃の機能的及び器質的障害(ルーメンアシドーシス、胃粘膜糜爛、潰瘍、便秘、変位、捻転)による内容物の通過時間の変化。 | |
神経性下痢(不消化便) | 環境及び飼養管理の不適正から来るストレスが迷走神経を興奮させ、腸蠕動亢進や消化酵素分泌異常を引き起こす。 |
下痢を見つけたら
下痢の発生初期で、元気および哺乳欲があり、脱水程度の軽い子牛や経口摂取が可能な子牛に対しては、牛乳や人工乳の給与を中止し、
経口補液で水分と電解質を補い脱水予防を行いましょう。
元気消失や哺乳欲の減退が認められる脱水中等度の場合、四肢冷感や皮温低下があり起立不能や虚脱状態に陥っている脱水高度の重症例では、
静脈内注射による補液が必要です。
脱水(%) | 臨床所見 | 皮膚つまみテスト(秒) |
---|---|---|
< 5 | < 2 | |
6 | 皮膚弾力の減退、口腔の乾燥、結膜の充血 | 4〜6 |
8 | 眼球の陥没、中等度の沈鬱、上記所見の増悪 | 6〜8 |
10 | 口腔と四肢の冷感、起立不能、上記所見の増悪 | 8〜10 |
12 | ショック症状、横臥、上記所見の増悪 | 20< |
12< | 昏睡、死亡 |
※皮膚つまみテスト:頚部の皮膚をつまみ、手を離してから元の状態に戻るまでの時間を見るテスト。

〇経口補液剤の投与
〇断乳(1〜2日迄)
〇下痢どめの投与
〇生菌剤の投与