家畜診療所情報
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家畜診療所だより

★ 乳房炎についてのお知らせです ★

乳牛における多発疾病は泌乳器病です。中でも乳房炎の発生件数は毎年上位を占めています。 搾乳衛生と正しい搾乳手順を守って乳房炎の感染経路を断ち切りましょう。

前搾り 1.前搾り
ストリップカップに受ける。
3〜4回思いっきり搾る。
1番早い異常発見方法です
ミルカー装着 5.ミルカー装着
−前搾りから装着まで
1分〜1分30秒で−

エアを吸い込ませない様にチューブを折って装着します。(クローを下に引く様にします)
乳頭清拭(荒拭き) 2.乳頭清拭(荒拭き)
一頭一布が原則です。乳頭及び乳頭基部のみとします。特に乳頭先端を丁寧に。
ミルクホースの調整 6.ミルクホースの調整
牛の体にホースを沿わせます。ティートカップが牛床面に垂直になる様にフック又はひもで調整します。
手指消毒 3.手指消毒
手指が汚れる都度行います。
(できればゴム手袋を使用する。)
ミルカー離脱 7.ミルカー離脱
−装着してから5分以内に離脱−
エアを完全に切ってから自然に落下するのを、腕でかかえ込む様に行います。ティートカップ内の牛乳をクローホース内に送ります。
仕上げ拭き(拭き取り) 4.仕上げ拭き(拭き取り)
−大腸菌等による乳房炎の予防−
使い捨てペーパー又は固くしぼったおしぼりを使用します。乳頭表面を乾燥させる目的で行います。一頭一布で行います。
ポストディッピング 8.ポストディッピング
−黄色ブドウ球菌の伝染の予防−
離脱したらすぐに乳頭の下から2/3以上に行います。(スプレーでなくディッパーが良い)

1.体細胞数は乳房の健康状態を示す指標です。

乳房に細菌が進入すると,乳房の内部では細菌と戦うために白血球が増加します。進入した細菌によって乳腺胞が痛めつけられて,上皮細胞がはげ落ちます。 細菌が進入すればするだけ、体細胞の数も多くなるわけです。正常な分房乳の体細胞数は20〜30万/ml以下と言われています。
しかし、体細胞数が増えても必ずしも、ブツ、発熱、ハレ上がりといった症状があるわけではなく、外見上は正常な牛と見分けがつかない場合が多いのです。 これが潜在性乳房炎です。

体細胞 = 上皮細胞 + 白血球

2.体細胞数は経営状態を見る指標です。

体細胞数が多くなるにつれ乳量が減少します。バルク乳の体細胞数を調べることによって,乳量の損失率とともに乳代の損失額が推定できます。
例えばバルク乳の体細胞数が70万/mlであったとすると、推定の乳量損失率は8%であり、30頭で年間150トン生産している場合は、120万円の損となります。

【一頭当りの推定年間損失】

バルク乳中の体細胞数 推定乳量損失率 推定乳代損失額
(年間一頭当り)
20〜30未満(万/ml) 2% 1万円
30〜50 4 2
50〜100 8 4
100〜150 10 5
150〜200 15 7

乳房炎の原因の多くは細菌感染です。搾乳方法や衛生面に問題があると感染の可能性が高まります。 原因菌の一つである黄色ブドウ球菌が乳房に侵入した場合は次のようになります。

〇伝染します。
〇体細胞が激増して大損します。(「【2】体細胞ってなに」を参照してください)
〇一度入ると絶対に出てきません。
〇難治性です。

乳頭管感染 (1)乳頭管感染 脱落壊死片や体細胞による乳管の閉塞 (4)脱落壊死片や体細胞による乳管の閉塞
乳腺への到達 (2)乳腺への到達 関連乳腺の退縮瘢痕組織の形成 (5)関連乳腺の退縮瘢痕組織の形成
乳腺細胞の壊死、変性白血球の侵潤 (3)乳腺細胞の壊死、変性白血球の侵潤 閉塞乳管の再開放と菌の放出 (6)閉塞乳管の再開放と菌の放出

大腸菌による乳房炎は全身症状を伴うことが多くひどい場合は起立不能になったり、廃用になったり、死亡するものも多くあります。
もし命が助かっても泌乳量が激減したり、泌乳が停止し経済的損失の多い乳房炎です。愛媛県内における全身症状を伴う乳房炎の90%以上が、 大腸菌が大腸菌に似たクレブシェラによるものです。オガクズに消石灰を3%混ぜたりプレディッピングすることにより、 70%以上の発症を抑えることができます。